昭和シェル石油の業績の足を引っ張ってきた太陽電池部門が、今年1~3月期に初めて
黒字化した模様だ。会社側はこれまで今年7~9月期からの黒字化を計画していたが、
再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)効果を受けた、想定以上の出荷増によって
黒字化計画を前倒しで達成した。
昭和シェルは100%子会社のソーラーフロンティア(2005年設立)を通じて
CIS薄膜太陽電池事業を行っており、昨年までは海外での価格競争激化や
国内市場の拡大の遅れ、重い設備投資負担などから赤字が続いていた。
だが、2012年7月に再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)が導入され、
初年度の太陽光発電の売電価格が1キロワット当たり42円と高く設定されたことを受け、
メガソーラーを含む非住宅用を中心に太陽光発電市場への参入が一気に拡大。
太陽電池メーカーへのパネル発注が急増している。
2011年迄はソーラーフロンティアの販売先は7割が海外、残る3割が国内住宅向けだった。
しかし、昨年から、過当競争の海外市場からFITが導入される国内へとシフトを強め、
国内販売比率が6割に逆転。国内でも昨年後半から非住宅向けが圧倒的に多くなっている。
過当競争で一貫して価格下落が続く海外市場に比べると、国内市場は4割前後高い水準
とされる。ソーラーフロンティアは、FITが生み出した大きな内外価格差の恩恵を、国内シフト
によって享受している。
国内市場全体の太陽電池出荷量の見通しはアナリストの間で上方修正が相次いでおり、
13年は昨年の約2倍にあたる5ギガワット程度とみられる。
昨年は世界の国別で5位だった日本が、今年は中国に次ぐ2位に浮上する可能性がある。
国内販売価格については、それほど落ちないとも言われる。
FITの太陽光発電の買取価格は13年度から37.8円へ下がるが、太陽電池の出荷は当面、
前年度の買い取り価格をベースとした設備向けが続くためだ。
今後は中国勢をはじめとした外資が、国内市場へさらなる攻勢をかけてくるとみられ、
国内メーカーにとって良好な市場環境が長続きするとは考えられない。
業界内でも「FITの優遇価格が続く3年間が限度」とみられており、数年先には
海外と同様の激しい価格競争が展開される公算が大きい。
ソーラーフロンティアでは、11年2月に本格稼働した主力工場の宮崎県国富工場
(年産能力900MW)の設備稼働率が昨年までは6~7割程度だった。
2013年1月からはフル生産に突入、それでも受注に追いつかないほどになっている。
2013年3月末には休止していた宮崎第2工場(年産能力60MW)を7月から再開を決めた。
(東洋経済Online)