再生可能エネルギー普及のための支援策、固定価格買取制度(FIT)。FITの目的は、火力発電などと同等まで太陽光の発電コストを引き下げることだ。基本的な考え方は規模の経済で、太陽光パネルの生産量が2倍になると価格は約20%下がることが分かっており、FITなどの政策支援がなくても太陽光の発電コストは火力発電同等レベルにまでゆっくりと下がっていくだろうが、それでは時間がかかりすぎる。
それならば、太陽光から作った電力の買い取り価格を保証することで規模の経済を加速すればよいが、もちろんFIT以外の政策でも可能だ。
FITはその時々の買取価格を固定とすることで、投資先としての透明感を出し、資金を引き付けやすくなることが特徴で、加えて一定期間ごとに新規の買取価格を下げることで、システムコストに対して削減圧力をかけることもできる。補助金制度とは異なり、高コストなシステムは排除される。
日本でも、買取価格は徐々に引き下げられているが、FITが終わった後はどうなるのだろうか?
FITを先駆けて導入され、太陽光発電システムが大量導入されたあとのドイツを見てみよう。
ドイツでは新規に設置された太陽光発電システムの出力の約3分の1が、設置先の家庭や企業で自家消費されている――ドイツの太陽光関連の企業650社が加盟する業界団体であるBSW-Solarが2013年7月に公開した調査結果だ。
なぜFITを使わず自家消費するのか。BSW-SolarのCEOを務めるカールステン・ケーニッヒ氏は、「家庭向けの電気料金は、自宅の屋根が生む太陽光発電の約2倍だからだ」と述べている。
BSW-Solarによれば、屋根置き型の太陽光発電システムに対するFITの価格は0.15ユーロ/kWh(約19.5円、130円換算)。家庭用の電力料金は0.27ユーロ/kWh(約35.1円)なので、系統連系して余剰電力を買い取ってもらうよりも、自家消費した方が儲かるため、特にこの数カ月間自家消費の比率が増えてきたという。
このような動向と並行して、ドイツでは太陽光と接続して使う蓄電システムへの関心が高まっているとBSW-Solarは指摘している。太陽光で家庭の電力の大半をまかなおうとするなら、ある程度の規模の蓄電システムが必要になるからだ。
2013年5月、ドイツ政府は小規模蓄電システムに対する助成金制度を開始した。BSW-Solarによれば、ドイツ復興金融公庫が既に700以上の助成金関連のプロジェクトに対して融資を実行したとのこと。
しかし小規模蓄電システムの導入はよいことずくめではない。ドイツの例ではシステム容量の見極めが難しいことが課題となっている。大容量のシステムを導入すれば太陽光をより有効に利用できるが、高コストになってしまう。逆の場合は太陽光が無駄になり、夜間に系統から高価な電力を購入しなければならなくなるからだ。
固定価格買取制度を先駆けてに導入し、FIT「卒業」直前のドイツ。FITを終わらせるときに何が起こるのかドイツの事例から学ぶことができる。家庭では系統から電力を買うよりも、太陽光で電力を発電するの方が半分の出費で済むというのが答えであった。
(IT media)