日本の住宅用太陽光発電の普及状況は?
国内で住宅への太陽光発電システムの普及施策が本格的に始まったのは1994年です。
通産省(現・経産省)の委託により、新エネルギー財団が住宅用太陽光発電システムモニター事業を開始したことで、一般家庭への普及が始まりました。
以来、普及拡大が進み、普及施策開始から18年後の2012年4月末、国内での累計設置件数がついに100万件を突破しています。
急速な普及には、継続的な補助金の支援策に加え、2009年に復活した「余剰電力買取制度」が大きな役割を果たしています。
電力会社が余った電力を買い取ってくれることで節約意識も高まり、消費者の太陽光発電システム導入意欲に火がつくことになりました。
加えて、2012年7月からは「固定価格買い取り制度」が始まり、メガソーラーの話題が新聞をにぎわせているように、住宅用以外の太陽光発電システムの普及も急速に進んでいます。
これまで、産業界では太陽光モジュールの高出力化、変換効率の向上をはじめ、住宅屋根への設置に関する技術の確立や長期信頼性の確保に努めてきました。
さまざまな計所の屋根への設置、地震や台風、豪雪などの自然災害への対応など、施工技術はさらに向上してきています。
太陽光発電の歴史
日本の太陽光発電はどのように開発・進化してきたのでしょうか?
今後の展望を考える上で、過去の重要なターニングポイントをおさえておきましょう。
年度 | 主な出来事 |
---|---|
1954年 | アメリカの研究者ピアソンが、半導体の接合部分に光を当てると電流が生じる現象、「pn接合」を発見 |
1958年 | 人工衛星への電力供給に、世界で初めて太陽電池が実用化 |
1973年 | 第一次石油危機で化石燃料は枯渇性エネルギーであることが認識され、太陽光エネルギーが注目される |
1974年 | 「サンシャイン計画」で石油の代替でクリーンな次世代エネルギーとして太陽エネルギーの利用推進を策定 |
1980年 | 官学産が一体の太陽光エネルギー開発体制が整い、ソーラーシステム普及促進融資制度が設けられる |
1986年 | 電力会社と自宅の双方向の供給システムである「系統連系」技術のガイドライン策定 |
1993年 | 従来の計画に、地球環境保護という目的を追加した「ニューサンシャイン計画」が策定される |
1994年 | 新エネルギーに関する関係省庁一体の基本方針である「新エネルギー導入大綱」が決定される |
1997年 | 京都議定書で、日本は1990年の数値と比較して温室効果ガスの排出を6%削減することを世界に約束 |
1999年 | 日本の太陽電池生産量で世界一に |
2001年 | 新エネルギー・産業技術総合開発機構による「革新的次世代太陽光発電システム技術研究開発」の公募 |
2002年 | 「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(PPS法)の施行 |
2005年 | 再生可能エネルギーの発電量の割合をFITにより急成長させたドイツが、太陽電池設置容量世界一に |
太陽光発電の今後の展望
2012年に導入世帯数が100万世帯を超え、FITの導入で注目されている太陽光発電市場ですが、今後の展望はどのようになっているのでしょうか?
世界、そして日本においても、CO2削減(環境保護)、再生可能エネルギー推進のため、太陽光発電の導入数・普及率を定めています。
資源エネルギー庁の試算では、2030年に最大導入のケースで住宅1000万世帯としています。
(出所)資源エネルギー庁[2009]「太陽光発電の導入拡大のためのアクションプランについて」
日本政府は、2030年までに全世帯の約3割に当たる1400万戸に 拡大する方針を掲げています。
そのため、補助金や売電制度といった導入補助施策に大きな予算を組んでいます。
一方で、業界全体に目を向けると、
- 太陽光発電メーカー
値段の高い半導体シリコンが原材料の多くを占めており、製造コストが依然高い。多くのメーカーが赤字で苦しんでいるのが現状。
- 販売施工業者
メーカーの多くが赤字・採算ギリギリのため、太陽光発電システムの仕入費用が高く、施工工事費用も含めると、販売施工業者も採算ぎりぎりのところが多い。メーカー施工基準が厳しく、実際には設置できない家・屋根も多い。
- 消費者
補助金や売電の制度がないと費用対効果が合わない
といった現状・問題点を抱えています。
パワーコンディショナーの変換効率を1%でも上げる「パワコンウォーズ」や、
最大出力・変換効率が改善された太陽光パネルの登場で巷で話題となりますが、
現状10倍以上の1400万世帯導入のためには、更なる技術革新が必要
(特に、太陽光パネル製造価格低減と設置基準緩和)とされています。
また、パネルの重さのほとんどはガラスですが、パネルの軽量化を図ることで、施工工事費用の低減や架台等の部材費用の低減も可能となります。
太陽光パネルの軽量化も、普及のための重要な課題と思います。
原子力委員会は、国全体での太陽光発電の普及のため、産業界・国・大学それぞれが果たすべき役割を以下としています。
【産業界の果たすべき役割】
- 太陽光発電システムの価格低減
- 魅力的商品の開発
- 大量生産体制の整備
- 製品ガイドライン、品質保証、リサイクル方法等の検討
【国の果たすべき役割】
- 住宅用太陽光発電システムの更なる普及拡大策の検討
- 産業界が積極的に導入するための大規模な基盤整備事業の拡大
- 各省庁、地方自治体、公共団体等の施設への積極拡大・研究開発の支援・推進
【大学・国立研究所の果たすべき役割】
- 太陽電池に関する革新的研究開発を産業界と協力し、強力に推進
- 海外の研究機関との共同研究開発の推進
2030年住宅1400万世帯に向けて課題は山積みですが、再生可能エネルギーの「エース」である太陽光発電市場の動向に今後も注目です。